修理中

0
    世の中はゴールデンウィークなんてな物に突入し、多くの人が海外および国内の行楽地などに遊びに行ったりしてさぞかし楽しく過ごしているのだろうが、俺の様な零細弱小個人事業者は今日も今日とて自宅でチマチマと仕事をして過ごしている。
    元々、世の中の人々が休んだり遊んだりしている時期がフリーランスにとっての掻き入れ時であったりもするので、この時期にチマチマながらも仕事をしていられるというのは有難い事ではあるっちゃあある。

    あるのだが、さすがに連日家でパソコン前に貼付いてばかりいては身体も鈍るという物。
    先月に負傷した左膝半月板が只今絶賛修理中という事もあり、ここ一ヶ月は道場での格闘技練習も控えているので運動量がめっきり減ってしまった。
    しかし食事に関しては相も変わらずなかなかのカロリー数を日々摂取しているので、俺の身体も日々膨脹する一方だ。
    さすがにこれはまずいぞと思い始め、時折部屋の隅に置いてある「コシティ」という木製のトレーニング器具をストレス解消がてら気まぐれにぶん回したりしている。
    これは中東諸国で昔から使用されている器具であり、昭和のプロレスラーの多くがこれをトレーニングに使っていたと言う。
    「ドラクエで、レベルの低いノロマなキャラが使う安い武器」の様な、お洒落さの欠片も無い無骨なルックスが俺の好みで、数年前に個人輸入して以来愛用している。


    14_01.jpg


    だが、なにぶん汚くて狭い部屋の中ゆえに、ぶん回す度にいろいろな物を巻き込んで倒したり壊したりしてしまう。
    そして散らばった物の後片付けや、壊してしまった物の修理に余計な手間暇を費やす事になり、むしろストレスを貯める結果になってしまう事もしばしばだ。

    そんな事を繰り返しているうちに気持ちが腐って来たので、ちょっくら外に出て肉でも食い散らかしてやる事にした。

    大久保界隈に行き、注意深く各店の看板を見て歩くと「延辺料理」「羊肉串焼」などという文字を時々目にする。
    これは北朝鮮との国境に近い中国の朝鮮族自治州「延辺」の料理を供する店であり、地理的な関係からモンゴルの影響もあるのだろうか、羊肉を使った料理が多い。
    その中でも代表的な物が羊肉の串焼きなのだが、これがまあなんというかすこぶる美味いので俺は羊が食いたくなると大久保に飛んで来る。
    この日も腹をグーグー鳴らしながら、いくつかあるお気に入りの延辺料理店の中の一軒に飛び込んで、早速ビールと羊肉などツマミ数品を注文した。
    見回すと店内は満席で、いつ来ても日本人客はあまりおらず各国の言葉が飛び交っている。この日は隣の席に在日ネパール人の親子がいたようで、時々衝立て越しにはしゃいで顔を見せる小さな女の子が元気良くて可愛らしかった。

    ちょっと異国感の漂う雰囲気を楽しみながらジャガイモのムチムなどをつまみつつ、肉を焼く準備が整うの待つ。
    「ムチム」というのは唐辛子を使った和え物の事で、タイ料理で言うところの「ヤム」の様な物のようだ。メニューには様々な種類のムチムが載っている。


    14_02.jpg


    俺の好物である「ジャガイモのムチム」は、シャキシャキとした千切りの生ジャガイモが青唐辛子と共に甘辛酸っぱいタレで和えてある。パクチーもしっかり効いており、辛いものが苦手な人でもついつい2口3口と食べ進んでしまう不思議な魅力に溢れた一品だ。

    そうこうしている間に、店員さんが焼き台の準備をしてくれる。
    テーブル中央に四角く開いた穴の中では炭火が煌々と燃えており、その上に金属製の骨組みの様な焼き台を設置してくれる。
    この骨組み台の上に串を並べて、自分で好きなように焼いて食うのだ。


    14_03.jpg


    早速運ばれて来た羊肉串を焼き台の上にズラリと並べる。羊肉の表面には様々なスパイス類がたっぷりとすり込んである。
    炭火の上で炙ると、スパイスが焦げる香りと共に羊の脂がジュクジュクと染み出ては炭火に落ちてジュジュッと音を立てて煙になり、芳醇な匂いを放っては消える。
    この時点で俺の口からはダクダクと涎がしたたり落ちており、もう辛抱たまらんという状態なのだがグッと我慢しつつ肉が焼けて行くのをジッと待つ。


    14_04.jpg

    14_05.jpg


    鉄串をクルクルと回しながら程良い塩梅に焼き上げたら、小皿に盛られたクミンシードや唐辛子などの三色スパイスを箸先でクルクルと混ぜ、すぐさま焼きたての羊肉をチョチョイと着けて口に放り込む。
    熱々の肉片を噛み締める毎に、マトンのしっかりとした羊臭さが香ばしいスパイス類と混ざり合い、絶妙なハーモニーを奏でながら口中いっぱいに広がって行く。そこに冷たいビールをゴブリと流し込み、一気に喉の奥へ。幸せのあまり思わずンガーと嬉しいうめき声を漏らしてしまう。


    14_06.jpg


    口の中がビールでリセットされたら、再び焼けた肉を鉄串からグイとしごいて抜き、スパイス着けてまた口に放り込む。肉。ビール。ンガー。
    修理中の膝の「なんか悪いとこ」の隙間に肉の栄養分がトロリと染み込んで行き、回復が早まって行くような気持ちにすらなって来る。
    そして合間合間にムチムや水餃子、蒸し鶏の辛ソースがけなどなどをチマチマつまむというまさに至福の時間。


    14_07.jpg


    メニューには他にもカエルの足や鶏頭、蚕蛹、犬肉料理などといったちょっと面白い物もある。
    以前は「牛竿」なる物もあったのだが現在はメニューから消えていた。
    これは文字通り牛のサオ。真綿で包んだ遠回しかつ上品な言い方をするならばチンコだ。

    チンコを他の物同様に鉄串に刺して炭火で炙り食うのだが、思ったよりもクセ、臭み、チンコ感などは無く、クニャコリした食感が楽しい一品だった。
    チンコ感という物がどんな感なのかはよくわからないが。


    14_08.jpg


    羊肉には「L−カルニチン」という脂肪燃焼を促進させる効果のある物質が豊富に含まれており、ダイエットにも最適な食材だという。

    久々にたらふく堪能して、すっかり羊肉スイッチが入った俺はこの日以降、近所の肉屋でラムやマトンを買って来ては焼き、そして食っている。
    「カルニチン、カルニチン」呪文の様につぶやきつつ連日羊肉を貪り食っては部屋でコシティをグルグルぶん回し、時々なにかにガシャンとぶつけて壊し、そしてまた羊を食う。

    L-カルニチンの効果で日々、さぞかし脂肪も燃焼されている事だろう。
    膝を怪我していてあまり運動が出来ない現在の俺にとっては理想的なダイエット方法だ。

    このダイエットを始めてから数日経ち、ワクワクしながら先ほど5日振りに体重計に乗ってみたら2kgほど増えていた。

    どうやら体重計も修理に出さなければいけないようだ。


    calendar

    S M T W T F S
      12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    2728293031  
    << May 2018 >>

    Dennis Ivanov

    (デニス・イワノフ)

    日本人。
    グラヒックデジャイナー。
    twitter:Dennis Ivanov

    selected entries

    archives

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM