2013夏のワールドツアー 〜イギリス・エジンバラ〜

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    前回からの続き〜


    チェンマイでの肉三昧な日々をダラリと一週間ばかり堪能した後、本来の目的地である英国エジンバラへと向かった。
    バンコクから約12時間のフライトは実に気が重かったのだが、機内に乗り込んでグースカ眠っているうちにさしたる苦もなくロンドンに到着してしまった。
    飛行機を降り、寝起きのボンヤリした頭のまま欠伸しながらヒースロー空港の入国審査の長い行列に並ぶこと三十分。
    ようやく自分の順番が回って来たので精一杯の爽やかボンクラ笑顔を浮かべつつパスポートを係官に差し出す。

    タイなどの東南アジア各国に比べてイギリスの入国審査というのがこれがなかなかに手強くて、こちらの英語力がゼロに等しいとわかっていながらもいちいちコマゴマと質問して来るので厄介な事この上無い。

    「英国に来た目的は?」
    「観光です」

    「一人で?」
    「一人だ」

    「ふうん、観光ねえ。で、何を観光するのかね」
    「フリンジフェスティバルのエジンバラに行きましてこれから」

    途中からガイドブックの文例に無い質問が始まり、徐々に文法が崩壊し始める。

    「フリンジフェスティバルでは何を観るのかね?」
    「コメディをマイフレンドがエントリー」

    「え?友達が出演するの?」
    「友達の私はコメディの友達の」

    「その友達の国籍は?」
    「日本人フロムジャパン」

    「あなたはなぜバンコクに寄ってから来たの?」
    「私のフロムジャパン」

    「え?」
    「私はジャパン」

    「だから、タイで一週間、何をしていたの?」
    「ジャパン」

    「なんかもういいや。通れ」


    そんなこんなでなんとか無事審査ゲートを通り、ようやくイギリスに入国。
    鉄道を利用してターミナルを移動し、国内線に乗り継いでエジンバラへ。

    一年振りのエジンバラ。
    チェンマイに着いた時に感じたのは「帰省感」だったが、こちらは「また、ここに来てしまった」という気持ち。
    「ヨーロピアンな風情満点の、石造りの古き街並」などといった物に何ら興味が無い俺である。
    空港から市街行きのバスに乗り込み、昨年と同じく二階建てバスの「一階最後部の端」という、観光気分皆無な席を陣取る。
    どんよりと重たい曇り空から時折小雨がパラつくというなんとも滅入る景色を眺めつつ、俺は到着早々に南国の陽光を恋しく思い始めていた。

    バスに揺られる事20分。終着駅で降り、一年振りにエジンバラの街中に立ち、周囲をぐるりと見回してみる。
    「ああ、また来ちまったなあ・・・」
    小雨そぼ降る中、思わず声に出してしまった。

    31_01.jpg

    とりあえず、宿の方向へと向かう事にする。
    例によって詳しい場所を調べて来なかったのでざっくりとした方向に歩き始めそしてものの5分で道に迷った。
    ちょっとどうかと思う様な急勾配の坂道を何度も登り降りし、スーツケースの滑車が石畳にバウンドしてガツンガツン音を立てる。
    ようやく辿り着いた町外れの宿は地元大学の学生寮。学生のいない夏休みの期間をホテルとして貸し出しているのだ。
    8月のエジンバラは観光のハイシーズンという事もあり物価がグンと跳ね上がる。こういった宿を利用しなければ金がいくらあっても足りない。
    小さなベッドと小机だけの4畳にも満たない部屋は実にシンプル。奥の壁には小さな小さな窓が、灯り採り程度に開けられている。

    「座敷牢」

    そんな言葉が一瞬脳裏に浮かんだが慌てて掻き消す。
    とりあえずシャワーと着替えを済ませ、撮影機材一式をリュックに詰め込んで早速出かけることにする。
    最高気温は20℃に届くかどうかといったところ。つい昨日までのタイとは実に10℃以上の気温差だが、なんとなく南国の暑さをいまだ身体にまとっているような気がしたので半袖Tシャツ一枚で出かける事にした。

    宿を出て、おおまかな方角だけしか調べずに目的の劇場へと向かった。
    だいたいの付近まで行けば通りのどこかでオレンジジャージの男が道行く人にフライヤーを配っている姿が嫌でも目に飛び込んでくるだろうと思ったからだ。
    宿から歩く事20分。
    このあたりだろうか、という角を適当に曲がったら予想通りにオレンジ色が見えた。
    早速リュックからビデオカメラを取り出して撮影を始める。
    こちらに気づいたオレンジジャージ。
    挨拶もソコソコに、こちらは撮影、向こうは客呼び、互いの任務を遂行する。
    すべては面白いライブの為。やあやあよく来たね、いやいや頑張ってますなあ、的なやりとりはさほど重要では無いのだ。

    31_02.jpg

    その後一週間、連日とにかく撮影した。
    午前と午後に子供ショー、夕方から稽古。街頭でのフライヤリングをこなしてそのまま夜のショー。
    23:00を回った頃に宿に戻り、日本から持って来た仕事を始める。
    深夜に眠りにつこうかという頃、時差8時間の日本は朝の始業時間を迎える。連絡が次々と入り始め、その都度対応する。
    なかなかにタイトなスケジュールだった。
    現地では様々なしょうもない事件が起きたのだが、その内容については順次全国巡業中の公演「清水宏のジャパニーズ・ロッキー!!」で、現地で撮影した映像と共に詳細に語られているので都合の合う方は是非とも会場に足を運んで頂きたい。必ず楽しんで頂ける筈だ。


    さて、昨年の滞在で「余程の金額を払わない限りロクなメシにはありつけない」という事を思い知ってしまったので今回は食事に関しては実にディフェンシブな姿勢をとってしまった。
    スーパーマーケットで食パン、ハム、チーズ等を買い込み、マヨネーズでベッタベタに味付けをしてサンドウィッチを作るという「俺サンド」が宿での基本の食事。我ながら美味くも不味くも無い、面白みに欠けるメシだが予算を抑える為には致し方無し。
    そんな、現地で食べたメシの中からいくつか印象に残った物を紹介したい。

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    〜カレー〜
    外出時のメシは主にカレーである。
    イスラム寺院の敷地内に併設されたカフェでは各種カレーを比較的リーズナブルな値段で食べる事が出来、これがなかなかにスパイスが効いており悪く無い味なのだ。

    「カレーは裏切らない」

    そんな言葉をしみじみと感じつつ、午後のメシは大抵ここでカレーを食っていた。

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    カフェではフリーWiFiも利用出来るので、ノートPCを持ち込んで仕事を片付けたりもした。
    が、横のテーブルではオレンジジャージの男が意味の分からない形相を浮かべつつブツブツと夜のショーの稽古をしている。
    そんなオレンジに対する周囲の客からの奇異の視線は、同じ日本人である俺にもセットで降り注ぎ、なんだかイマイチ集中出来なかった。

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    〜一見まずそうなジュース〜
    一見いかにも不味そうなデザインの缶ジュースがあった。
    ので、買ってみた。
    飲んでみたらもちろん不味かった。

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    〜ビール〜
    夜、その日の本番が終わった後はパブに寄ってビールを一杯。
    スコットランドは上面発酵のビールの本場でもあり、泡を極力少なくするようにグラスに注ぐスタイルのようだ。
    タイの氷ビールに慣れきっていた到着当初は今ひとつしっくりこなかったのだが、日を追い、身体がエジンバラに馴染んで行く毎にしみじみ美味いと思える様になって来た。
    「酒はその地の物を飲むのが一番」という至極当然な事実を実感した。

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    ほろ酔い気分で夜道を歩き、宿へと帰る。
    途中、路地の向こうの空にぽっかりと、ライトアップされたエジンバラ城が浮かび上がる。
    石畳の急勾配だらけでメシの不味い地ではあるが、まるでドラクエの世界に入り込んだかの様なこの風景はちょっとだけ好きだ。

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    〜ソーセージ〜
    宿に戻って、仕事をしつつ晩酌。
    ツマミはスーパーで買ったソーセージ。
    パッケージを開けて中から現れたのは馬蹄形をした肉感たっぷりのソーセージ。
    なんだか期待出来そうなルックスだ。

    31_11.jpg

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    1ポンドという値段の割には嬉しいボリューム感でもある。
    早速スライスして皿に並べ、まずはラベル買いしたオーガニックビールを一口。
    ほんのりとした甘味と共に、薬草のような独特の香りが個性を主張する。賛否がはっきり分かれそうな味だが俺は好きだ。

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    続いてソーセージを一切れ、口の中に放り込んでガプリと噛み締める。
    フニョリとした食感とともに、なんとも言えない酸味と軽いえぐみが口中にひろがり、一拍置いてなんだかケミカルな後味がやって来る。
    つまり、迷い無くこう言える。

    「まずい」

    が、不味いからといってメシを残すわけにも行かない。
    マヨネーズをグチャリとかけて、味をわからなくしつつなんとか全て平らげた。
    この国はどこまで行っても不味い物からは逃れられないようだ。

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    千秋楽はなんだか異様な空気の中で始まった。
    昨年そして今年と現地で観たステージの中でもずば抜けて特別なグルーヴ感に満ちたショーだったように思う。
    俺は、スタッフとして関わるステージに関しては極力客観的な視線で一歩引いて観る事を心がけているのだが、この時ばかりは何度か鳥肌が立ってしまう瞬間があった。

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    そんな最後のステージを完全燃焼で終えた余韻に浸る間も無く、俺は急いで機材を撤収した。
    我ながら慌ただしいスケジュールを組んでしまったのだが、終演一時間後にエジンバラを出発する深夜バスでロンドンへと向かうのだ。

    「じゃ、また東京で!」

    挨拶もソコソコに会場を飛び出した。
    夜のエジンバラの街中に「祭りの終わり」の、何とも言えない空気が漂っていた。
    そんな空気と人をかきわけながら、俺はスーツケースをガラガラ引きずりつつバスターミナルへと走った。

    〜次回に続く〜




    「清水宏のジャパニーズ・ロッキー!!」
    10/5 浜松エスケリータ68
    10/24 福岡ブードゥーラウンジ
    10/26 仙川KickBackCafe
    10/27 山梨 甲府 桜座カフェ

    「今治スポンサー探し地獄旅編」
    10/8 大阪 北区 Bスクエア


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    Dennis Ivanov

    (デニス・イワノフ)

    日本人。
    グラヒックデジャイナー。
    twitter:Dennis Ivanov

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