2013夏のワールドツアー 〜バンコク再び〜

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    前回からの続き〜

    朝、ウドンタニのホテルをチェックアウトして空港に向かった。
    角刈り白髪頭の爺さんが運転するトゥクトゥクの荷台に揺られながら、これといった特徴の無い街並をぼんやりと眺めた。
    明日の早朝には日本に向けて出発である。
    しかし旅の終わりの感慨が全く無い訳では無いが、あちらこちらと移動して様々な出来事があった割には極めてフラットな感情しか湧いて来なかった。
    短期間の間に様々な文化圏を行ったり来たりしているうちに、少々不感症気味になってしまったのかも知れない。

    トゥクトゥクはやがて街の大通りから脇道に入り、目の前にはのどかな田舎の景色が広がり始めた。
    旅の始め頃であれば、些細な風景すらも見逃すまいと周囲を見回していただろうが、今や硬いシートにダラリと身を委ね、ただひたすらに空港への到着を待つだけだ。

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    ウドンタニ空港から国内線に乗り込んで1時間ほどでバンコクのドンムアン空港に到着。
    日本への帰国便はスワンナプーム空港から明朝7:30発。つまり6時前までにはカウンターでチェックインしなくてはならない。
    朝の移動を考慮して、空港近くの宿に泊まる事にした。

    ドンムアン空港とスワンナプーム空港の間には無料のシャトルバスが運行されている。
    無料なだけあってなかなかにオンボロなバスに揺られて小一時間。
    そしてスワンナプーム空港でタクシーに乗り換えて10分ほど。今回の旅の最後の宿に到着した。

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    「空港に近くて値段が手頃」
    という条件で選んだ宿は無駄に床面積は広いのだがどうにも病院のような寒々しさが漂う部屋だった。
    鈍感な俺ですら部屋に入った瞬間にゾゾッと背筋に不思議な寒さが走ったので、霊的な物に敏感な人だったら何かが見えてしまう類の不吉な部屋なのかもしれない。
    が、なんだか色々とかったるい気持ちになっていた俺は荷物を投げ出すとすぐさまダラリとベッドに倒れ込んだ。
    バンコクの中心部へと繰り出す時間も十二分にあったのだが、なんだかそんな気持ちにはなれなかった。
    昨日ウドンタニに到着して以来、なんとなく旅の好奇心という物が減退してしまったのだ。
    特に昨夜の干し肉のイマイチさ加減がテンション低下に拍車をかけてしまったようだ。

    だるだると起きあがってシャワーを浴びた後に窓を開け放ち、再びベッドにゴロリと寝転びウトウトしていたら突然ドタドタという異音と共に部屋中に悲鳴が響き渡った。
    「出たか!?」と驚いて飛びあがって見てみれば、勢い余って窓から飛び込んで来たと思しき鳩程の大きさの見た事の無い鳥がキャアキャアと奇声を上げパニック状態になって凄い勢いで部屋中を飛び回っている。どうしたら良いのかわからなくなって俺もキャアキャアと声を上げてパニック状態になって部屋を走り回った。
    なんかもうバッツンバツン壁にぶつかりながらしばし飛び回った後に、鳥はベランダの窓から外に出て行った。
    気づけば静寂に再び包まれた部屋の中で俺はパンツ一丁で立ちすくんでいた。なんだか虚しい気持ちになり、眠気はどこかへ飛んでしまった。
    ベランダに出てぼんやりと街を眺めていたら、遠くの建物の間から青空市場がチラリと見えた。
    まだ陽も高い事だし、このまま部屋でゴロゴロしていても仕方無いのでブラリと向かってみる事にした。

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    市場は活気があり、大勢の地元の人達で賑わっていた。
    屋台で豚レバーの汁ソバをズズズと啜る。パクチーが散らされて黒胡椒がガツンと効いたこいつがなんだかえらいこと美味かった。
    自分の中の何かのスイッチが入ったような、そんな感覚があった。
    ブラブラ歩いて生肉や川魚、いろとりどりの野菜類、様々な惣菜などを眺めて歩いていたら数時間前まで疲れて萎えていた気分も徐々に高まって来た。

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    市場の端には子供の遊び場があり、ここがまたなんとも言えない雰囲気を漂わせていた。
    空気で膨らませる式のカラフルな遊び場はどこかで見たような様々なキャラクターで彩られてはいるのだが、おそらくメンテナンスが雑なのだろう。
    ところどころで酸素不足に陥ったキャラがぐったりと倒れて瀕死の状態に陥っており、見ているこちらを不安な気持ちにさせてくれる。

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    俺はこの市場がすっかり気に入ってしまい、昼も夜も通って様々な物を食った。
    食って、ビールを飲み、また食って、ビールを飲んだ。

    俺の旅のテンションはメシ次第だという事が良くわかった。
    メシが美味けりゃ旅も楽しい。不味けりゃ下がる。シンプルな話である。


    今回、市場で色々と食い散らかした様々な食い物。その一部をざざっと紹介。


    〜茹でエビ〜
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    見ての通り、エビをさっと茹でて塩を振っただけのもの。
    これがもう、ビールのつまみに素晴らしく合う。
    右側の小振りな海老は一盛りたったの30バーツ。日本円にして100円ほど。
    ガッツガッツと夢中で食い散らかしてあっという間に無くなってしまった。


    〜カブトガニの卵の玉子焼き〜
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    タイカレー風味の玉子焼きの中にはツブツブプチプチとしたカブトガニの卵が。
    カブトガニの卵自体にはこれといった味は無いが、カレーの風味が効いているのでカオニャオなどの米類と一緒にいくらでも食える。


    〜なんらかの実をどうにかしたもの〜
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    甘酸っぱい何かの実が、桜えびと一緒にドロリと甘いタレで和えてある。
    正体はなんだったのかいまだにさっぱりわからない。
    一応全部食ったが「どういう気持ちになったら良いのかわからない」そんな味だった。


    〜串焼き類と豚耳〜
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    まあ、保険である。
    日本の焼鳥と大きな変わりは無いが、串に刺した肉を炭火で焼いてで食らうというのは万国共通の美味い食い物だ。
    人間の根源的な食の喜びを感じさせてくれる。


    これらを買い込んでビールと一緒に次々と流し込み、旅の最後の日は終了。
    部屋には特に何か「怖い奴」が現れる事もなく夜は更けて行った。
    翌日早朝5時に宿を出発して帰国の途に着いた。
    バンコクの空港では朝焼けを見ながら、今回の旅を振り返って思いを巡らせた。
    約一ヶ月で、チェンマイ〜エジンバラ〜ロンドン〜バンコク〜ビエンチャン〜ウドンタニ〜バンコクと、3カ国6都市を主にバスでバタバタと回った。
    正直な所、終盤は少々の旅疲れを感じる場面もあった。
    若いバックパッカーでもあるまいに、もういい年した大人である。こんな慌ただしい旅はもう当分の間する事はないだろう。

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    と、普通なら思う所なのだろうが、実は今回の旅の途中で一件の連絡を頂いた。
    栗コーダーカルテットというバンドの川口義之氏から、秋の東南アジアツアーに記録撮影係として同行しないかというお誘いだった。
    20日間弱ほどの日程でハノイ〜ルアンパバーン〜ビエンチャン〜バンコク〜ヤンゴン〜チェンマイと、4カ国6都市を回るなかなかタイトなツアーである。
    半分位は今回と同じルートだったが、もちろん二つ返事でOKした。

    翌月、俺は羽田空港で飛行機の搭乗待ちをしていた。
    タイ国際航空TG661便バンコク行き。
    これから訪ねる国々では、どんな食い物達が待っているのだろうか。
    なかなかに過密日程の過酷なツアーになりそうだが、行く先々で出会うであろうまだ見ぬ肉類に思いを馳せていれば不安も薄らいで乗り越えられるだろう。
    搭乗時間になり、機内に乗り込んで座席に座り、シートベルトをカチリと締めて俺は思わずつぶやいた。


    「さて、もう一周」


    〜2013夏のワールドツアー おしまい〜



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    Dennis Ivanov

    (デニス・イワノフ)

    日本人。
    グラヒックデジャイナー。
    twitter:Dennis Ivanov

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